失語症

言葉を理解し表現することに障害が起こるのが失語症です。

文字の読み書きにも同時に起こり、聞いたり、読んだり、書いたり、話したりすること、すべての動作に問題が起きてしまいます。そのため、話せないからといって書いてもらうこともできません。

五十音表を使って、言いたいことを指差すことも困難です。話していることが理解できなかったり、話が長くなると聞き誤ったり聞き漏らしていたりします。

症状には個人差がありますが、失語症ではこのような問題が起きるのです。

言語聴覚士は、このような失語症の患者さんと、どのように関わっているのでしょうか?

失語症が軽い患者さんには、ゆっくりとせかさずに話を聞きます。聞き手の方が話の要点を理解することが大切なのです。

聞き間違っていないか確認するために、表現を変えていくつか質問します。

失語症が重い患者さんで、自分からうまく話せない場合は、質問を「はい」「いいえ」で答えられるものにし、それに答えてもらいます。

この場合も、表現を変えて何度も質問して、聞き間違えてないか確認します。

また、やさしい漢字の単語を使って、会話の中のキーワードを表示したり、絵を見せたりジェスチャーで表現すると理解されやすいです。

失語症になってしまった場合は、言語聴覚士による訓練を受ける必要がありますが、病院の中で行う訓練だけがリハビリではありません。

退院してからも、家庭での日常生活におけるやりとりも、効果的なリハビリになります。失語症で困っている方やその家族の方は、あきらめずにリハビリを続けることが大切です。

子供の言葉の発達

1歳頃になると子供は少しずつ「まんま」などの、意味のある言葉を話すようになります。

そして徐々に、言語を使うことでコミュニケーションをとることに、楽しさを感じるようになると、さらに大人とのコミュニケーションも求めるようになります。

そして、もっともっと言葉が発達していくのです。しかし、何かの原因で言葉の発達が遅れてしまう子供もいます。

その原因としては、言葉を話すための唇や喉などに問題があったり、知的発達によるものであったり、いろいろな原因が考えられます。

子供がいつまでたっても、言葉を話さないと、親としては心配になるのは当然です。どこで相談すればいいのか悩んでいる方も多いでしょう。

言葉の発達についての相談は、教育機関では、盲学校や聾学校、養護学校です。小学校や幼稚園でも「ことばの教室」を開いているところもあります。教育センターなどでも相談にのってくれます。

医療機関や保健機関では、小児科や耳鼻咽喉科に問い合わせてみて下さい。言葉に関して専門的な言語聴覚士がいる病院や保健所などを探してみるといいでしょう。

もしも、あなたの大事な子供さんの言葉の発達について、心配なことがあるようでしたら、困って悩んでいるだけよりも、このような機関に相談してみてください。

言葉の発達に関しては、個人差がとても大きいようです。それが障害であるのか、それとも個性なのかを見極めるのは難しいことです。

子供さんがもっとも望んでいる言語のための、良い環境をつくってあげることが、親としての大事な役目だと思います。


高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害という大脳が損傷したことにより、高次脳機能に障害をもつ患者さんを言語聴覚士が担当する場合もあります。

高次脳機能とは「言語を使うこと」「考えること」「記憶すること」「学習すること」「感情をもつこと」などのヒトのもつ特徴的な高度な能力のことをいいます。

これらに障害をもつことを「高次脳機能障害」といいます。失語症も高次脳機能障害の一種です。高次脳機能障害には、他にもいろいろ種類があります。

麻痺しているわけでもないのに手を動かすのが不自由だったり、目で見ている物が何だか理解できないことがあります。右脳に損傷があると、左側のものに注意できなくて気づかないことがあります。

記憶障害においては、新しいことを覚えることができず日常生活や仕事・勉強に差し支えます。遂行機能障害という障害は、やる気が出なくてわがままになり怠けたような態度をとったりします。

筋道の通った考え方や行動ができなくなったり、集中力に欠けたり、性格が変わってしまったりといった症状が現れます。

このような症状は、性格が問題だと人格を否定されてしまうことがありますが、決してそうではありません。

高次脳機能障害の患者は、さまざまな変わった症状が現れるため自分でも症状を自覚できず、周りの人からも理解されにくいことが多いです。

社会的にもあまり認知されておらず誤解を受けることもあります。だから高次脳機能障害の症状のある方には、言語聴覚士などのリハビリチームによる専門的な訓練を受け、周囲がしっかりと理解し支えていくことが必要なのです。

吃音

「吃音」はコミュニケーション障害のひとつです。一般的に「どもり」と言われている障害です。言葉がスムーズに出ず、話しにくさが特徴です。

本人は言いたい言葉が頭では分かっているのに、それがなかなか出てこないのです。

「・・・こんにちは」のようになかなか始めの音がでない難発性、「こ、こ、こ、こんにちは」のように音を繰り返す連発性、「スーこんにちは」のような音を伸ばして話す伸発性といった発声をします。

何とか言葉を出そうと、しかめた顔をしたり、足踏みをして声を出すなど、瞬間的に動作をしてしまう随伴症状を伴うこともあります。

吃音が起こる年齢は2〜4歳が多く、男性の方が多く発症するようです。

幼児期に吃音の症状が出た場合は、親はそれに対して叱ったり、せかして早く話させようとしないでください。

子供の話をゆっくり聞いてあげようとする優しい態度が必要なのです。

言葉を話すのがつらそうな人に出会ったら、その人の話そうとすることによく耳を傾けて下さい。

吃音で悩んでいる人が、あなたの身の回りにも多くいるという事実を、知っていてほしいと思います。

しかし、子供が吃音のことに気づき困っているようなら、「ことばの教室」などに問い合わせてみてください。

「ことばの教室」では、言語聴覚士などの専門家が相談に乗ってくれます。でも吃音を専門的に扱っている言語聴覚士はあまり多くはないようです。

今後の課題として、吃音を専門とした言語聴覚士を養成していくことが重要です。

認知症

言語聴覚士の対象といている障害には、高次能機能障害というものがあります。言語や記憶、思考などの高次脳機能に障害が起こることを高次機能障害といいますが、それが全般的に低下することを「認知症」といいます。

認知症は老化によるボケとは違います。認知症では、物忘れや徘徊、失禁などの行動を起こし、日常生活に支障が出てきます。

その背景には、患者さん一人一人の理由があります。問題行動を無理やり直そうとするのではなく、そうなってしまった理由を理解して、適切に対応するが大切なのです。

認知症になる原因には、脳卒中で脳に損傷を負ったり、アルツハイマー病のような脳細胞が死んでいく病気などによります。

このような場合は、医学的な治療やリハビリテーションが必要です。一時的に脳に異常が起こったときや、脱水によって認知症のような症状が現れることがあります。

この場合は、画像診察などで原因を明らかにし、適切な処置によって治ることが多いです。何かおかしいと思ったら、早い時期に病院で受診するようにしてください。

また、認知症の原因には生活環境も影響します。

例えば、ずっと寝たきりでいたり、社会的に孤立していたり、周囲から刺激されることがないと認知症の要因となります。

その状態がそのまま放置されると、ますます認知症がひどくなる可能性があります。

そのようなことにならないように、日常生活においてなるべくたくさん会話をする、何かできる範囲で役割をもってもらうなど、できるだけ頭を働かせるようにしないといけません。

環境の変化にストレスを感じ認知症を発症させることがあります。そのため、認知症のケアや予防するためには、環境を安定させストレスのない人間関係が大切です。

家族や周りの方に認知症の疑いがあったり、介護で悩んでいる方は、言語聴覚士がいる病院や保健センターに問い合わせて相談して下さい。


摂食・嚥下障害への言語聴覚士の対応

言語聴覚士は老化や脳卒中などによって摂食や嚥下機能など食べるための機能に障害のある方々に、その機能を回復するため、そして食べることの楽しさを再び感じてもらうためのリハビリテーションを行っています。

摂食・嚥下障害とはどんな障害なのでしょうか。摂食とは食べることを意味し、嚥下とは飲み込む行為のことを指し口から胃へ食べ物を送る運動のことを意味します。

嚥下障害とは飲み込むときに生じる障害を意味します。

この障害は、好きな食べ物を食べる楽しみを、奪ってしまうことも問題です。食事の量が不足すると脱水症状を引き起こしたり、栄養が低下する恐れもあります。

さらに、誤って飲み込んで気管に入ってしまった食べ物は、肺炎を引き起こしたり、気道をふさいでしまって窒息の危険があります。

嚥下障害のある患者さんとって、最大限に摂食・嚥下能力を向上させ摂食能力が快適で、医学的にも安定した状態で確立することは、とても大事なことになっていきます。

その方法の1つとして、言語聴覚士が行っている、摂食・嚥下障害のためのリハビリテーションがあります。

そこで行なう間接訓練では、飲食物を使わないで行ないます。この訓練は、摂食と嚥下に関わる器官を、よりよく働かせるために行ないます。

実際に食べ物を使って行なう直接訓練では、食べ物を噛み砕いたり、飲み込む練習を行ないます。食事前の訓練として嚥下体操をすることで、口や舌が食べるための準備ができます。

嚥下体操をするようになってから、食べるときにむせることが少なくなったという方も多くいます。

このように言語聴覚士は栄養障害や誤嚥による肺炎などを予防し、できるだけ口から食べられることを目標にリハビリテーションを行っています。

人工内耳

補聴器は一般的に難聴のための補装具として使用されてきました。

軽度〜中等度の難聴なら補聴器を装用することで会話をすることができます。しかし、両耳が高度難聴であるのなら補聴器はあまり効果がなく、会話をするのが困難になります。

その点、人工内耳はそのような高度難聴に対して、とても効果的な医療機器です。生まれつき耳が聞こえない子供に、人工内耳を早い時期に装用して、訓練を行なうことで、音声言語の習得がよりスムーズになることも期待できます。

人工内耳は体外装置と体内装置の2種類の装置からなり、体内装置は手術で耳の後ろに埋め込む必要があります。

人工内耳が適応できるかどうかを判断するため、手術前に検査をいくつか受ける必要があります。

手術は全身麻酔をして行ない2〜3時間程度で終わり、入院してから2〜3週間で退院できます。

一度手術をしてしまえば基本的には再び手術をする必要はありません。手術による副作用もほとんどありません。手術費用の自己負担額は数千円程度で済んでしまう場合が多いです。

体外装置は補聴器のような形で、装用後も以前とほとんど変わりなく日常生活を行なうことができます。体外装置を外せば入浴も可能です。

人工内耳を装用した後の聞き取る能力は一人一人違います。だから、言語聴覚士が良く聞こえているかを評価し定期的に機器の調整を行うことが必要です。

ほとんどの方が人工内耳を装用すると、聞き取り能力が向上し生活しやすくなったと感じています。

もし人工内耳の装用について考えている方がいたら、耳鼻科医や言語聴覚士に相談してください。

構音障害の治療

構音障害は筋肉や神経の病気によって話すために働く筋肉が動きにくくなり、ろれつが回らないような状態になる障害です。

原因となる疾患によって異なる症状が現れます。主な症状は、発音したつもりの音がはっきり出ていなかったり、違った音が出ていたり、話す速さが早くなったり遅くなったりします。

運動性構音障害の治療は言語聴覚士によるリハビリテーションを行ないます。

まず訓練を行なう前に、不自然な姿勢や筋肉の緊張を和らげてから頭と頸を安定しながらリラックスした状態で始めます。

次に呼吸訓練をするため、正しい呼吸運動をするための姿勢を指導します。

そして空気を急速に吸ったり、息を止めたり息を吐いている時間を延ばす練習をします。

患者さんが息を吐き切った後、言語聴覚士が胸郭を圧迫することで息を吐く時間をさらに延ばさせます。

ストローでコップに入った水を吹く練習などがあります。

話をするときに空気が鼻に漏れる状態の鼻咽腔閉鎖不全によって、開鼻音(発声が鼻に漏れる発声)となる場合、舌圧子を使って軟口蓋を上にあげて母音の発声をさせます。また、氷刺激を与えることによって、軟口蓋の動きの感覚を戻します。

実用的な発話が成し遂げることができないときや、発話以外の方法とも併用した方が効率がよくなるときは、字を書くことができるのならメモ帳やホワイトボードを使ったりします。

重度の障害の場合は、簡単なジェスチャーや五十音表で指さしをします。